世田谷区 保育の質ガイドラインについて
■ 保育運営に関する区独自の基準の主な項目や取り組み
現在運営している認可保育園においては、国の児童福祉施設の設備及び運営に関する基準に区独自の項目を上乗せし 、
①~③の全ての基準(ただし②については0歳児保育実施の場合のみ)に基づき保育環境を整備している事業者に運営費の上乗せをしています 。
- ①職員配置
- 国の基準に基づき保育士(資格有り)を10割配置し 、かつ1歳児5人に対し保育士1人配置(国基準 1歳児6人に対し保育士1人配置)、3歳児15人に対し保育士1人配置(国基準 3歳児20人に対し保育士1人配置)
- ②上乗せ配置
- 0歳児保育実施園においては、保健師(看護師)1人の配置及び調理員の1人上乗せ配置
- ③ 面積基準
- 0歳児保育室1人当たり5㎡以上(国基準3.3㎡ )
また、認証保育所は東京都の基準、保育室は世田谷区の基準に基づき運営をしており、区は運営費を助成しています 。
■ 保育施設整備・運営事業者決定時の取り組み
認可保育園、認定こども園、地域型保育事業及び認証保育所の整備・運営事業者の決定にあたっては、学識経験者を含む3~5名の委員会を組織し、以下の通り評価・審査を行っています。
(1)審査内容
委員会において、「法人」、「現在運営している施設の状況」、「これから整備・運営する保育施設」に関して評価し、総合的な審査を行っています。
書類審査 | 財務状況を含む法人の運営状況、運営している保育施設等の指導計画・保育日誌等、運営している保育施設等の保育内容、新設する保育施設の提案内容などについて、提出された書類に基づき、審査を行っています。 |
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現地調査 | 現在運営している保育施設等に赴き、実際に現場で実践されている保育、設定されている保育環境、実施されている給食や食育などについて、審査を行っています。 |
ヒアリング調査 | 法人の経営層や施設長候補者に対して、保育観や保育現場で認識している課題と対応、新設する保育施設の実現性などに関して、ヒアリング、審査を行っています。 |
(2)重視している評価の視点
「保育所保育指針」「世田谷区保育理念」「世田谷区保育方針」を理解した上で、世田谷区において新たな保育施設を運営する意欲と熱意を有し、
保育の質を維持・向上できる事業者であることを基本とし、以下の視点を重視して評価を行っています。
事業者の理念 | 児童福祉の理念・公共性・公益性を持ち、社会的使命を担っている事業者であること。 |
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事業の安定性・継続性 | 運営にあたっての安定性・継続性が担保されていること。 |
運営管理体制 | 保育現場や客観的な外部の意見を取り入れるなど、民主的な運営がなされていること。 |
保育の質 | 子ども本来の発達・育ちを重視し、子どもの視点に立った優良な保育を実施しており、保護者支援のみならず、世田谷区の保育理念と地域の特性に配慮した活動が行われていること。 |
人材の確保・育成 | 計画的な職員採用・人材育成により、質の高い職員が確保されていること。 |
■ 保育施設開設までの支援に係る取り組み
事業者決定から保育施設開設までの間、より深く区の方針や地域性を理解していただき、円滑に保育施設の運営を開始できるよう、
支援を行っています。
(1) 保育施設整備・運営事業者決定時の指摘事項の改善
審査・選定時に、保育内容等に関する課題などが指摘された場合、事業者決定における附帯条件や留意事項を、法人の経営者層や施設長候補者に伝え、保育施設開設前にそれらの条件に対応できるように準備していただいています。
(2) 開設前研修等の支援
必要に応じ、保育施設の開設前に新設保育施設で働く予定の職員を区内認可保育園で実地研修として受け入れ、新設保育施設の職員間でその経験を共有していただいています。今後、「世田谷区保育の質ガイドライン」を共有していただくことや区内の社会資源等について把握していただくために、開設前の支援をより充実させていく予定です。
■ 保育施設への多様な支援
現在、区内には多用な形態の保育施設があり、それぞれの特性・特色を生かした保育を提供しています。数多くの子どもたちが保育を受け、多くの家庭が安心して子育てできる環境を確保するために、全ての保育施設でよりよい保育が展開されるよう、様々な支援を行っています。
- (1) 保育に関わる専門職による巡回指導相談
- 専門職(保育士・看護師・栄養士)が、区内保育施設を不定期に訪問して日頃の保育内容を見学し、保育内容や衛生管理、子どもの様子や健康状態などを保育施設の方と共に確認し、保育内容の充実のため必要に応じてアドバイスを行っています。
- (2) 人材育成
- 区は、学識経験者等からの最新の保育情報解説や危機管理研修、保育実践等の研修、個人情報保護などの運営管理の研修など、様々な研修を主催、実施しています。研修の中にはグループワークを多く取り入れ、保育施設職員間で情報を交換し、様々な保育の形態や考え方を学ぶことができるよう工夫しています。
- (3) 保育ネット
- 区独自の取り組みとして、区内5地域で、様々な保育施設が支えあい、保育の質の向上に取り組むことが重要であるという共通認識のもと、自発的・自主的に保育ネット(保育関係者のネットワーク)の活動が行われています。
この保育ネットで情報と専門性を共有し、地域の保育施設や関係機関が支えあうことで、保育の質の向上への取り組みがよりいっそう高まると考え、保育ネットの取り組みを側面から支援しています。
- (4) 情報共有・外部評価
- 定期的に園長会や事務連絡会等を開催し、区の事業等の進捗状況の説明や保育施設間の情報共有の場を設定しています。また、第三者評価の定期的な受審や自己評価などを促進し、全ての保育施設が区全体の保育の質の向上に協力して取り組んでいけるよう支援しています。
■ 保育の質ガイドライン 成果について
世田谷区では、まず保育施設同士が同じ保育を提供する者として、さまざまな保育施設がつながり、情報の共有を行い、学びあい、相互に支えあう関係ができはじめています。
例えば、園庭のない保育施設が園庭のある保育施設に遊びに行く5歳児の園児が少ない施設では、近くの保育所の5歳児クラスと交流をして集団を経験する、など子どもたちの活動が広がるのと同時に、職員はさまざまな保育を見て体感し自らの保育を見直すきっかけとなっています。
さらに発展すると、地域全体で防災訓練を実施し、近くの保育所に避難し合同で避難訓練をするなどの活動を行っている地域もあります。
つぎに、区が研修の機会を設けることで、さまざまな保育施設の職員が研修を受講することができることです。少人数で家庭的な雰囲気の中で保育を行っている施設では、講師を招いて研修を実施することはなかなかできません。世田谷区として、研修を企画運営することで、幅広くさまざまな施設が受講できます。また、受講した結果を、各自が保育所内で共有化していただくことで、各保育施設における保育の質の向上につながります。
また、グループワークでほかの保育施設の職員との情報交換を行うことで、自らの保育の振り返りや新たな保育を知る機会となっています。
最後に、世田谷区全体の保育の質の向上があります。前述のとおり、さまざまな保育施設があり、それぞれの園目標に基づいて保育に携わっています。そのような中でも、研修や地域での会議の機会や開設前からの支援を行い、「世田谷区保育の質ガイドライン」に基づき、世田谷区の保育理念や方針をお伝えし、世田谷区の考える保育の質についてより理解を深め、協力して質の向上をめざすことができる地域であるよう努めています。